筋トレの記録に関する名言集|王者はなぜ記憶に頼らない?6人が語った「記憶より記録」
筋トレの記録の大切さを語った言葉を、コーチ、ボディビルの王者、マラソンの金メダリストから集めました。記録が面倒になった日に読み返せるよう、ブックマークしておいてください。
言葉は4つのテーマに分けています。記憶より記録、成長の可視化、前回を超える、努力の蓄積。後半には、出典がはっきりしないまま広まっている有名フレーズと、編集部のオリジナルの言葉を分けて載せました。
各カードのラベルは出典の確かさを示します。原文確認は出典で原文を確認したもの(日本語は編集部訳)、要旨は出典の内容を日本語で要約したもの、出典不詳は言い伝えです。記録がなぜ効くのかを理屈で知りたいときは筋トレノートをとる価値をあわせてどうぞ。
この記事の主な根拠
- ジム・ウェンドラーは自身のサイトで、トレーニング記録を「これまでに読む最高のトレーニング書」と呼び、記録をつければトレーニングが上手になると書いた。[1]
- ジム・シュミッツは1960年6月27日の最初のトレーニングから記録を残し、記録は何が効くかを把握するうえで重要で、続けるほど価値が増すと述べた。記入にトレーニング以上の時間をかけるべきではないとも書いている。[2]
- マーク・リプトーは、何かを成し遂げたい人には記録が必要で、自身も全ワークセットを簡潔に記録していると書いた。[3]
- グレン・ペンドレーは、計画と記録は切り離せず、前回の内容を知らなければ進歩は起こらないと論じ、紙のノートを勧めた。[4]
- ドリアン・イエーツは1984年から1997年の引退まで、トレーニング・目標・食事・エネルギーなどを日誌に記録し、定期的に見返していた。[5]
- ジェームズ・クリアーは「最も効果的なモチベーションは進歩」という一節を、グレッグ・マキューンの『エッセンシャル思考』の言い換えとして紹介し、習慣の記録は努力の目に見える証拠になると書いた。[6]
- エリウド・キプチョゲはインタビューで成功のヒントの1つめにトレーニング日誌を挙げ、13年間つけ続けていると語った。[7]
- ダン・ジョンは共著『Easy Strength』で、日誌をつけることを自身の最も大切な戒めと呼んだ。[8]
- 「測定されるものは管理される」の元とされるRidgwayの1956年の論文は、業績測定が本来の目的からのずれを生むという弊害を論じたものである。計測は活動の楽しさを下げる場合もある。[9][10]
1. 記憶より記録——頭ではなくノートに預ける
「トレーニング記録こそ、あなたがこれから読むなかで最高のトレーニング書だ。」
Your training log is the GREATEST BOOK ON TRAINING YOU WILL EVER READ.
原文では大文字で強調されています。どんな名著より、自分の体で試した結果が書かれた一冊のほうが自分には役に立つ、という主張です。
「何かを成し遂げたいと決めたなら、記録は欠かせない。たまにジムで体を動かすだけなら、記録する理由はない。」
1回のセッションが次に影響しない運動なら記録はいらない。前回の上に今日を積むなら記録が要る——線引きがはっきりしています。リプトー自身も、本格的に競技をしていない今でも全セットを簡潔に記録しており、記録なしでは効果的にトレーニングできないと書いています。
「記録は、何が自分に効いて、何が効かないかを把握するために、きわめて重要になる。」
Workout books become extremely important for keeping track of what works and what doesn't work for you.
「効いた気がする」は記憶に残りますが、「何を変えた週に伸びたか」は残りません。同じ失敗を繰り返さないための記録です。
「好記性不如爛筆頭(どんなに良い記憶力も、使い古しの筆で書き留めたものにはかなわない)」
筋トレのために生まれた言葉ではありませんが、ここに挙げた言葉すべての要約になっています。1回のトレーニングで扱う重量と回数は30〜40個。覚えておける量ではありません。
2. 成長の可視化——見えない進歩を、見える証拠に
「最も効果的なモチベーションは、進歩である。」
The most effective form of motivation is progress.
筋肥大は数週間単位でしか見えません。そのあいだ「進んでいる」という合図をくれるのは、同じ重量で1回増えた、という記録だけです。
「習慣を記録することは、努力を目に見える証拠にすることだ。」
Habit tracking provides visual proof of your hard work.
クリアーの話は筋トレに限ったものではありません。ただ、結果が出るまでの時間が長いほど、途中の証拠が続ける力になるという点は、筋トレにそのまま当てはまります。
「この13年間、トレーニング日誌をつけ続けている。」
成功のための10のヒントの1つめに挙げたのが日誌でした。何が効いて何が効かないかを追えるから、という理由です。種目は違っても、世界の頂点にいる選手が真っ先に挙げるのが記録だという事実は覚えておく価値があります。
3. 前回を超える——漸進性過負荷は「前回」がないと始まらない
「トレーニングの計画と記録は切り離せない。前回何をしたかを知らずに、進歩は起こらない。」
漸進性過負荷は「前回より少しだけ上」を積み重ねる方法です。前回が曖昧なら、今日のセットは上回ったのかどうかを判定できません。ペンドレーは記録を嫌がる選手の多さを嘆き、スマホよりも失くしにくい紙のノートを勧めていました。
「1984年に始めてから1997年に引退するまで、毎日のトレーニングと目標を書き続け、定期的にページを見返して傾向を探した。」
イエーツは食事、エネルギー、気分まで記録していました。王者のトレーニングは「ノートの数字を超える」ことが毎回の目標だったと伝えられています。高重量・低ボリュームで知られる彼の方法は、前回の数字が手元にあることを前提に組み立てられていました。
前回の数字をどう今日の目標に変えるかは、重量を増やすか回数を増やすかと回数の数え方で具体的に書いています。
4. 努力の蓄積——記録は、続けた年数だけ価値が増える
「記録は長く続けるほど価値が増す。それが競技人生の歴史になるからだ。」
They become more valuable the longer you lift as they create a history of your weightlifting career.
シュミッツの最初の記録は1960年6月27日。身長と体重、そしてミリタリープレス、カール、スクワット、デッドリフトを35ポンドで10回ずつ。そこから半世紀以上の履歴が続いています。数年分の記録は、あとからお金を出しても買い戻せません。
「トレーニングについて学びたいなら、記録をつけなさい。そうすれば魔法のように、トレーニングが上手になる。」
If you want to learn about training, keep one. If you do so, like magic, you become better at training.
ウェンドラーは、長年の記録を持っている人ほど、ストレスの多かった時期に何をしていたかを見返すよう勧めています。答えは本ではなく、自分のノートのなかにあるという考え方です。
「日誌をつけること。それが私の最も大切な戒めだ。」
ダン・ジョンは、停滞を見つけて立て直す方法を示せたのは日誌だけだった、という指導経験を書いています。停滞は「最近伸びない気がする」という感覚ではなく、並んだ数字のなかに現れます。手順は記録で停滞に気づく方法にまとめました。
5. よく見かけるけれど、出典に注意したい言葉
記録や測定の名言として広まっていても、本人の発言として確かめられない言葉があります。言葉自体は使えますが、「誰々が言った」と紹介する前に知っておきたいものをまとめました。
| 人物 | よく見る言葉 | 実際のところ |
|---|---|---|
| ドラッカー | 測定されるものは管理される | 著作になく、1956年の論文が元とされる |
| ピアソン | 測れば上がり、報告すれば加速する | 一次出典なし |
| イエーツ | 記録なき練習は海図なき航海 | 確認できず |
| メンツァー | 日誌は旅の地図 | 確認できず |
1つめは皮肉な経緯をたどっています。元になったとされるV. F. Ridgwayの1956年の論文は、数字で評価すると人は数字を満たすことに走り、本来の目的からずれていく、という警告でした。筋トレでも同じことが起こります。重量を更新したくて可動域が浅くなれば、記録は伸びても筋肉への刺激は減ります。記録は判断の材料であって、目的そのものではありません。
なお、出典の原文を確認できなかった言葉(ダンテ・トゥルーデル、スチュアート・マクロバートらの記録に関する発言として出回っているもの)は、この記事では収録を見送りました。
6. 編集部オリジナル——ジムで使える12の言葉
ここからは誰かの発言ではなく、BTB Workout Log 編集部が書いた言葉です。待ち受けやノートの表紙、自分への声かけに自由に使ってください。
- 記憶は今日を語り、記録は半年を語る。
- 前回の数字は、今日の自分への挑戦状。
- 「前回くらい」は、目標ではない。
- 1回増えた日も、書かなければ増えなかった日になる。
- 伸びていないと感じたら、感覚ではなく半年前のページに聞く。
- 記録は過去のためではなく、次の1セットのためにある。
- 調子の悪い日に前回と同じ数字を守れたら、それも前進。
- 数字を更新できない日は、条件をメモする日。
- 停滞は、記録のなかでしか見つからない。
- 強くなった証拠は、鏡より先にノートに出る。
- 書く時間は短く、見返す時間は長く。
- 今日の1行が、1年後の自信になる。
7. 名言を明日のジムで使う3つの習慣
名言は読んで終わりにすると効きません。ここまでの言葉を、次のトレーニングでできる行動に置き換えます。
- 始める前に前回の行を読む:今日の目標を「前回+1回」か「前回+1段階の重量」で決めてからバーを握る。
- 書くのは種目・重量・回数だけ:項目は少ないほど続く。余力(RIR)と条件メモは後から足す。
- 月に一度、昔の記録を開く:1か月前・半年前と比べ、伸びた種目と止まった種目を分ける。
「記録を書く時間が、トレーニングの時間より長くなってはいけない。」
You don't want to spend more time filling out your workout book than working out.
記録の大切さを語った人ほど、記録の手間には厳しい目を向けています。BTB Workout Log は種目を選ぶと前回の重量・回数が表示され、1セットの記録は数タップで終わります。広告なし・オフラインで動くので、セット間の集中を切らさずに「前回を読む」と「今日を書く」が済みます。
よくある質問
- この名言集の言葉は、本人の発言ですか?
- カードのラベルで区別しています。「原文確認」は出典で原文を確かめたもの、「要旨」は出典の内容を日本語で要約したもの、「出典不詳」は言い伝えです。出典を確認できなかった有名フレーズは、5章にまとめて注意書きをつけました。
- 名言を自分のSNSやノートに使ってもいいですか?
- 6章の編集部オリジナルの言葉は自由に使ってかまいません。他の人物の言葉を紹介するときは、発言者と出典をあわせて書くことをおすすめします。
- 記録を続けられないときはどうすればいいですか?
- 項目を減らしてください。種目・重量・回数の3つだけで、前回を超えたかどうかは判断できます。続かない原因は意志より入力の手間であることが多いので、前回値がすぐ見られる方法を選ぶのが近道です。
まとめ
- 記録は自分専用のトレーニング書になる(ウェンドラー)
- 何が効いて何が効かないかは、記録でしか追えない(シュミッツ)
- 前回を知らなければ、前回を超えたかどうかも判定できない
- 記録の価値は続けた年数とともに増え、あとから買い戻せない
- 有名な「測定されるものは管理される」は出典に注意。数字は目的ではなく判断材料
参考文献・出典
- Jim Wendler: Answering the Impossible Question
- Jim Schmitz on the Lifts: The Training Log (IronMind)
- Mark Rippetoe: Keeping a Training Log (Starting Strength)
- Glenn Pendlay: The Training Log (On Target Publications)
- Do You Really Need to Keep a Training Log? Dorian Yates Did (elitefts, from Muscular Development)
- James Clear: Visualize Your Progress and Stay the Course with a Habit Tracker
- Up your game with winning tips from champ Kipchoge (Business Daily Africa)
- Mining for Gold: The Art of the Training Journal (quoting Easy Strength)
- Dysfunctional Consequences of Performance Measurements (Administrative Science Quarterly, 1956)
- The Hidden Cost of Personal Quantification (Journal of Consumer Research)