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「種目数を増やせば筋肉は成長する」とは限らない

「種目数を増やせば筋肉は成長する」とは限らない

種目を増やす価値があるのは、今のメニューでは足りない動作や部位への刺激を補えるときです。似た種目を足すだけなら、筋肥大の上積みより疲労と重複が増える可能性があります。

判断基準は種目の本数ではなく、役割の異なるハードセットを十分な質で行い、その種目を継続して伸ばせるかです。

この記事の主な根拠

  • 15研究(経験者対象は2件)のメタ解析では、筋群あたりの週セット数と筋量増加に用量反応関係が報告されている。[1]
  • 大腿四頭筋と肘屈筋の筋断面積増加について、頻度・強度・ボリューム・トレーニング様式の影響が検討されている。[2]
  • 8名が50%・70% 1RMで行ったフラットと45°インクラインのベンチプレスでは、大胸筋の最大EMG振幅の分布が異なった。[3]

「多くの種目で刺激する」はどこまで正しいか

一つの筋肉でも、関節角度や動作の方向が変われば、負荷を受けやすい部位や可動域は変わります。例えばフラットと45°インクラインのベンチプレスでは、大胸筋各部の筋活動が一様ではありません。脚でも、膝を大きく曲げ伸ばしする動作と股関節を中心に動かす種目では、同じ「脚トレ」でも役割が異なります。

そのため、主力種目だけで拾いにくい動作や部位を補助種目で埋める発想には合理性があります。多関節種目で全体の負荷を確保し、単関節種目で不足を補う組み合わせもその一例です。コンパウンド種目だけで十分かを考えるときも、種目の本数ではなく「何がまだ足りないか」が先に来ます。

ただし、異なる筋活動が観察されたことと、種目を追加するほど長期の筋肥大が増えることは同じではありません。バリエーションには意味があり得ますが、無制限に増やしてよい根拠にはなりません。

種目数は筋肥大の「投与量」ではない

誤解は、種目の数を刺激量そのものとして数え始めるところから生まれます。筋肥大研究で量を扱うときの中心は、通常、筋群ごとの週間セット数です。5種目を行っても各1セットなら5セットであり、2種目を各3セット行えば6セットです。種目数だけでは、実際にどれだけ鍛えたかは分かりません。

「分けた」だけか「足した」のかを区別する

胸を12セット行う計画を2種目から4種目へ分けても、週間量は12セットのままです。刺激の配分は変わりますが、量が倍になったわけではありません。一方、各種目のセット数を保ったまま2種目を追加すれば、週間量は増えます。この場合に変化を生んだ候補は、種目数だけでなく追加されたセット数です。

週間セット数と筋肥大には用量反応の傾向が報告されていますが、増やした全セットが同じ価値を持つわけではありません。狙う筋群へ十分な負荷が乗り、限界まで残り1〜3回ほどのRIRで行えるハードセットかどうかを分けて考える必要があります。

種目を足す前に確かめることを示す図解

似た種目を足すほど後半のセット品質は落ちやすい

ベンチプレスの後にチェストプレス、ダンベルプレス、さらに似た軌道のマシンプレスを並べれば、種目名は増えます。しかし、どれも同じ押す動作に偏り、後半は胸より三頭筋や全身の疲労が先に制限するかもしれません。予定回数をこなしても、対象筋へ高い張力を与えられないセットが増えれば、追加した時間に見合う刺激とは言いにくくなります。

もう一つのコストは、種目ごとの練習機会が薄まることです。毎週8種目を入れ替えると、各種目を同じ条件で繰り返す回数が減り、フォームの安定や負荷設定に時間がかかります。筋肥大に新奇性が不要という意味ではありませんが、重量・回数を伸ばす前に次の種目へ移れば、漸進性過負荷を積み上げにくくなります。

さらに、追加したセットは局所疲労だけでなく、関節への負担、トレーニング時間、次回までの回復にも影響します。追加直後のパンプが強くても、次回の主力種目で重量や回数が落ち続けるなら、週間全体では不利になっている可能性があります。

研究が示すのは「適切な変数の組み合わせ」

筋肥大は、種目数という単独の数字だけで整理できるものではありません。頻度、強度、ボリューム、トレーニング様式などが同時に関わり、同じ3種目でもセット数、RIR、可動域、頻度が違えばプログラムの中身は別物になります。

週間ボリュームを増やすと平均的な筋量増加が大きくなる傾向はあります。ただし、それは「種目名を増やせば増やすほど成長する」という規則ではありません。少数の種目へ有効なセットを配分しても、複数の種目へ同じ総量を分散しても、比較すべきなのは対象筋への刺激、セット品質、回復、継続的な進歩です。

一般に、角度によって筋活動の分布は変わり得ますが、それだけで長期的な筋肥大効果までは判断できません。実践では「何種類でも増やす」のではなく、「主力だけでは弱い役割を、必要な分だけ補う」と考えます。毎週変化を作る必要があるという同じメニューへの誤解とも切り分けましょう。

なぜ「種目が多いほど効く」と感じるのか

新しい種目は慣れていないぶん、強いパンプや筋肉痛を起こしやすく、それが成長の上積みに見えます。また、種目追加と同時にセット数も増やせば、変化が種目の多様性によるものか、単なるボリューム増によるものかを分けられません。目新しさと仕事量の増加が重なるため、種目数そのものが原因だという誤解が残りやすいのです。

新しい種目には一つの明確な仕事を与える

種目を足す前に「この種目で何を補うのか」を一文で答えます。答えが「違う刺激が欲しい」「飽きたから」だけなら、追加する理由としては弱いままです。次のように、既存種目と役割を比較すると判断しやすくなります。

追加する理由判断確認すること
異なる角度・動作を補う追加候補主力では拾いにくい役割か
痛みを避けて対象筋を鍛える置換候補同じ目的をより安定して果たせるか
弱点部位へ直接セットを足す追加候補回復可能な週間量に収まるか
似た軌道でパンプを増やす保留既存種目のセット追加と何が違うか

主力を固定し、変更は一度に一つ

まず各筋群の主力となるアンカー種目を残し、重量・回数・RIRを比較できる状態を作ります。そのうえで不足を補う種目を一つ加え、数週間は他の条件を大きく変えずに観察します。種目を増やしすぎると判断が難しくなる理由は、進捗を比較する視点で詳しく整理できます。

新しい種目には一つの明確な仕事を与えるを示す図解

種目数の正解は、追加後のデータで決める

追加が有効だったかは、当日の達成感ではなく3〜6週間ほどの推移で判定します。新しい種目で対象筋へ安定して負荷をかけられ、主力種目を含む重量や回数が維持または向上し、次回までに回復できているなら、その種目には残す理由があります。反対に、後半の回数低下が大きい、関節の違和感が増える、主力の進歩が止まる、時間だけが延びるなら削減候補です。

見るべき順番は、①役割の穴があるか、②週間ハードセット数は不足しているか、③追加後も各セットの質を保てるか、④数週間で重量か回数の進歩があるか、⑤回復できているか、です。この順番なら「とりあえず種目を増やす」から、「必要な仕事だけを追加する」へ発想が変わります。

記録を判断材料にすることで、種目を足した前後の変化を同じ基準で比べられます。

まとめを示す図解

よくある質問

1部位あたり何種目にすればよいですか?
固定の正解はありません。まず主力種目で必要な週間ハードセットを確保し、異なる角度や動作、弱点部位を補う必要があるときだけ追加します。種目数より、各セットの質と数週間の重量・回数の進歩を優先してください。
同じ種目を続けると筋肉が刺激に慣れませんか?
同じ種目でも重量、回数、RIR、可動域が進歩していれば刺激は固定されていません。痛みが出る、長く停滞する、役割の穴がある場合は変更候補ですが、変化を作るためだけに頻繁に入れ替える必要はありません。
種目を減らすべきサインは何ですか?
後半の種目で重量や回数が大きく落ちる、主力種目の停滞が続く、関節の違和感が増える、次回までに回復しない、時間だけが延びるといったサインです。役割が重なる種目から一つ外し、数週間の推移を比較します。

まとめ

  • 種目数より、役割の異なる質の高いハードセットが重要
  • バリエーションは角度・動作・弱点の穴を埋めるときに有効
  • 似た種目の追加はボリュームと疲労の重複になりやすい
  • アンカー種目の進歩と回復を見て追加・削除を判断する

参考文献・出典

  1. Dose-response Relationship Between Weekly Resistance Training Volume and Muscle Mass
  2. The Influence of Frequency, Intensity, Volume and Mode of Strength Training on Whole Muscle Cross-sectional Area in Humans
  3. Non-uniform Excitation of the Pectoralis Major During Flat and Inclined Bench Press

計画したセット数と、実際にやったセット数を並べて見る。

メニューは組んだ時点ではまだ仮説です。BTB Workout Log は部位別の週間セット数を自動集計するので、計画どおりに積めているかをその週のうちに確認できます。

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